0070 ソロセーリングでフネから転落した!
一人で乗っていたヨットから転落した!
海は荒れ気味、セールは半降り、エンジンは微速前進。
あっという間にフネは1m以上も離れてしまった。
セーリングに良い季節になりましたね。どうぞくれぐれも安全にはご留意のほどを、酔っ払い運転はイケマセン。
シーマンとしての恥を忍んで、死に損なった体験談を公表します。
世のセーラーたちの安全を、切に願って・・・。
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「ある落水事故」(1)
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2004年7月25日(日)は晴天で暑く、東京湾北部は風が強かった。
気象に関する注意報、警報は出ていない。ギラつく真昼の太陽がまぶしい。
仲間のドタキャンで、私は一人で自艇ロスミナ‐Ⅱに乗り、千葉市いなげの浜沖5㎞、観潮塔付近の海上にいた。数日来の予報から、気象海象はこれ以上悪くはなるまいと判断する。
主帆を揚げるのにかなり苦労したくらい波がきついので、前帆は安全のため揚げない。
しかし危険なほど悪い情況とは思えず、主帆のみで飛ぶように走る。ジャジャ馬慣らしのような操縦感覚は捨てがたい。
私はまだ豪快なオーシャンスポーツと、ワインを楽しむ余裕があった。風速10mくらいか、あたりは白波一面。
早めに切りあげるべく、千葉港口の5番ブイ方面に向かう。キャビン内はもまれてメチャクチャだが、フネには特に異常はない。学生たちの小型艇は引き上げたようだ。
エンジンを微速前進に入れ、風に正対し帰港準備にかかった。舵はゴムひもで結んであるが、それでも波がきつく直進してくれない。
帆を降ろしにかかったが、風が振れて途中で引っかかった。暴れまわるフネを立直しながら、コックピットとデッキの間を何度も往復した。何度目かに引っかかった帆を解いているうち、大きい横波を食って体が右舷側に落ちかかった。
「やばい!」と立て直そうとしたが、ワインの酔いもあって踏ん張れず、体は水中に落ちた。フネのライフラインをつかんでとにかく離れないようにしたが、次の波を食らったときはあっという間に1m近く離れてしまった。15時過ぎ、引き潮の始まる時刻である。
微速とはいえ前進に入れてあるエンジンと、降ろしかけで半効きの主帆でフネは結構速い。ライフジャケットをつけ衣服を着たままでは、追いつけるものではない。体力の消耗する方を恐れた。こんなときに限ってフネは正直に直進し、港の奥に向かっている。
海水は暖かく、風と波は激しいが、とにかく浮いていられる。水を飲まないように気をつけた。水を飲むと、急速に体力を失うものらしい。ライフジャケットだけが頼りだ。いつまで浮いていられるのか。幸いケガや打撲はしていない。眼鏡を失わなかったのは、ラッキーだった。
岸からはおよそ3km、ブイまで700m位あるだろうか。
意を決して5番ブイに向かう。風と波は真向かいの方角になる。果たして行き着けるか、たどり着ければ助かる。
幸い日没まではかなり時間の余裕はある。泳いでみても進んでいるのかどうか、全く判らない。少しでも疲れないように、波の静まったときを見ては「ちょっとタンマ」と休んだ。
干潮時に入り、少しずつブイが大きく見え出した。引き潮はブイへの接近を助けてくれるが、つかまりそこなったら、沖に流されてしまう。抜き手を切る腕がだるくなった。
およそ50分泳いで、ブイのはしごまで数10mにせまったが、自分自身に「あと100m」と何度も言い聞かせる。1回でつかまないと、再度挑戦する気力体力が残っているか。波と風を見計らって慎重に接近した。
ブイのはしごに取りついて時計を見たら15時50分。
(「ある落水事故」(2)に続く)
落水事故顛末記の後半です。
この事故の後、ある古いヨット仲間からタップリ叱られました。本気で叱ってくれる友というのは、ありがたいものです。
一件落着してから、水上警察と海上保安庁には“お礼参り”に伺ったのは言うまでもありません。
水上警察巡視艇「いぬぼう}の新田艇長とは、その後何回か洋上でお会いして、和やかに別れました。
写真は発見してくれた海上保安庁のAS-332Lスーパーピューマの同型機(朝日航洋カレンダーより)と千葉県警のベル206の同型機です。
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「ある落水事故」(2)
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滑りやすいはしごを注意深く登り頂きに着いたが、海面上10mではゆれはさらに大きい。ブイの頂上は腰をおろせるくらいのスペースがあり、周囲は手すりで囲まれていて、ゆれてもつかまっていれば危険はない。問題は日没である。今日はおよそ18時半ごろ。
フネが港内方向に無人で走っていたのは確かなので、いずれは発見され落水事故として捜索されるだろう、という希望的観測はある。幸い寒くはないが風が強く、夜間になったらどうなるか。
作業船や釣り舟が、操舵している船長の顔がはっきり見えるくらいの近くを通過し、躍起になって手を振ったが全く気づかない。
時間だけが過ぎ16時40分、太陽は大分低くなってきた。
海上保安庁の巡視艇らしい船や大型ヘリコプター、千葉県警の小型ヘリなどが、稲毛観潮塔付近を行き来しているのが見える。やはり捜索が始まったのだろうか。
出港届にはいなげの浜、観潮塔付近としてある。
海上保安庁機は、洋上を往復しながら次第に近づいてくる。まだかなり遠いが、こちらを向いたときに遭難信号を送り続けた。せめて鏡でもあれば、まだ日光があるので、反射信号を送る事は出来るのだが。
何回か繰り返しているうち、突然ヘリがまっすぐこちらに向かってきた。ランディングライトを点滅させている。発見された!! 17時22分。
私はヘリで捜索救助に従事した事はあるが、救助される方になってみると、ヘリが神様に見える。そのうち2艘のランチが高速で、まっすぐこちらに向かってきた。助かった!!
千葉県警水上警察の巡視艇「いぬぼう」の新田艇長は大男で、ご自身もヨットマンだそうだ。
「ヨットは水警の桟橋に繋いでありますよ。損傷はありません」という。艇内を調べて、船舶検査証から私の連絡先その他を把握したらしい。すぐに雄和マリーナに連絡が行き、出港届がチェックされた。
海上の事故なので、海上保安庁の所管だそうだ。
海難事故として海上保安庁千葉支部で事情聴取を受けたが、係官は親切で応対は丁寧だった。
「この電話で、まず家族に知らせなさい。こちらからすでに連絡はしてある」という。防水ケースに入れた携帯電話を、艇内に残してきたことを、今ごろ思い出した。不注意のきわみだ。
そして、水警も海保も“海のおまわりさん”たちは粋でもある。新田艇長は「赤ワインの瓶が空いていましたな」とニヤリと白い歯を見せたのが、印象に残った。
落水はシーマンとして恥であり、自己過信を深く反省して、今日もしぶとく生きている。
(了)
自由課題 「生き残ったシリーズ」(3) (2450字)
(2007.05.04)
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コメント
SAGANさん
いつもご覧頂きまして、有難うございます。
この後しばらくしてフネを手放し、ヨット乗りを引退したつもりですが、セーリングの魅力は絶ち難く、
時々江ノ島で乗ってます。バンドルネームの“帆走子”からして、未練タップリ。
ところで「お礼参り」とは、本当は美しい行為です。ヤーさんが使うからおかしくなるんで・・・・(笑)
投稿: 帆走子 | 2009年5月12日 (火) 08時58分
帆走子さま。
なんと危険なお話!
やはり、ワインの飲みすぎはよくありませんね。
もっとも、ハワイなどでヨットに乗ってサンセットを楽しみながら、フラのショウとマイタイなんぞを飲みながらの
クルージングは何度も経験しましたが、気持ち良い潮風に吹かれていると、
美味しいワインを飲みたくなりますよね。
でも、ご無事で良かった!
投稿: SAGAN | 2009年5月12日 (火) 01時29分