0022 恋魚
私の恋人ならぬ、恋魚をご紹介しましょう。
「まとうだい」といいまして、やや深場に棲む底魚です。フランスでは珍重される高級魚だそうですが、漁獲量は少なく街の魚屋ではあまり見かけません。 なんとも愛嬌のある顔に魅せられて、勝手に恋魚にしています。
先ごろ訪れた茨城県大洗の那珂湊魚市場で、まとうだいの干物を見つけました。残念ながらあまり鮮度が良くなく、お土産に持ち帰り焼いたら、グズグズに崩れてしまいました。味は白身で淡白ですが、アマダイほど美味とはいえませんでした。
この「まとうだい」を題材にしたエッセイがあります。写真はアクアマリン福島で、ねばって撮ったものです。飼育が難しいのか、水族館でもあまり見られません。
まとうだい
出張先の港町で、ふらりと入った居酒屋のガラスケースに、見なれない魚を見かけた。柳かれい位の大きさで、青みがかった褐色の地に目立たぬ程度の黒い縦縞が入っている。ちなみに魚では頭から尾に走っているのが縦縞である。鮮度が良さそうな、澄んだ目がぎょろりと大きい。余り食欲のわく魚相ではない。
「珍しいのがあるね、マトウダイかね」
「お客さん、良くご存じですね。刺身でもいけますよ」。
フリの客に頑固そうな親父が、これでうちとけてきた。大きくなると50cm近くになるそうだが、小ぶりなので塩焼きにしてもらった。頭が大きいので、刺身にしたら食べるところがなくなってしまう。初めて食べたが、新鮮なせいか淡白な白身がホロリと取れる。しかしそれほど美味とはいいがたい。お値段はけっこうしたようだ。
子供の頃から海や魚が大好きで、自称お魚博士の私は、関東と関西の水族館は全部行っている。大阪海遊館のジンベエザメなどは顔見知りになるほどだ。鳥羽水族館には6時間もいたことがある。
まとうだいも知ってはいたが、実物にお目にかかったのはこのときが最初だった。フランス料理では好んで使われる食材で、なかなかの高級魚だそうである。極端に偏平な魚体の中央に白でふちどりした黒い鮮やかな斑点がある。弓矢の的に見立てて、的鯛とも書く。口が大きく上を向いており、はらびれは大きく尻尾はうちわのようだ。とくに背びれは大きく長く、毒を持った種類もいる。漁獲量は少なく、普通の魚屋ではまずお目にかかれない。
泳いでいるまとうだいに、はからずもお目にかかったのは、この夏福島県いわき市に
オープンした巨大な海洋博物館、アクアマリン福島だった。 世界で初めて、泳いでいるサンマが見られるのが売り物で、それはそれで楽しめたのだが、思いがけずに発見したまとうだいの水槽に、私は張りつけられてしまった。
何とまあ愛嬌のある顔をしているんだろう。タイとはいうものの魚の王様、真鯛の美しさとは似ても似つかない。長い背びれを広げてゆったりと泳いでいる。黒いマトが 鮮やかだ。上を向いた大きな口を開けてあくびまでして見せた。なんとなく舞台の名脇役を思わせる。比較的深い所(50~70mくらい)にいるので、飼育が難しいのだろう。独立した水槽に1匹だけだった。
同行した女房殿に得意になって説明するのだが、「あまり美味しいそうじゃないわね」でおしまい。 (了)
課題「魚づくし」 NOV-15-2000
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コメント
ujihitoさん
我が恋魚、まとうだいをご存知で嬉しいです。
山陰では良く揚がるのですか。フライにするのはやはり3枚おろしで、フィレにするのでしょうか。
贅沢な食べ方ですねー。
このエッセイの続編があります。よろしかったら、どうぞお立ち寄り下さい。
http://rusmina-2.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-c00b.html#comments
投稿: 帆走子 | 2009年6月 2日 (火) 21時37分
マトウダイ、
山陰ではよく揚ります。
新鮮なうちに冷凍保存して於きます。
一番好きな食べ方はフライです。
塩こしょうの下味がよく合うところみると、
フランス料理で重宝されるのが分かります。
山陰では寿司のネタにも使われます。
しかし私はフライが好きです。
投稿: ujihito | 2009年6月 2日 (火) 18時54分
エムさん
いつもコメントを頂き、有難うございます。それにしても我が恋魚「まとうだい」を良くご存知で…。
サンシャイン水族館は健在です。都会のビルのてっぺんで、よく頑張っていると思いますよ。もしお出でになるなら、入る前に池袋グリーン大通り周辺のチケットショップをご覧になると良いですよ。たいてい招待券などがあり、期限の近いものはうんと安くなります。
都内には葛西、品川、品川スタジアム、サンシャインと水族館が4つありますが、私のイチオシは葛西です。
イルカやアシカのショーはありませんが、安いし大きいし内容が充実していて、私ごとき学究の徒?には、ありがたいです。
投稿: 帆走子 | 2008年8月25日 (月) 12時21分
魚といったら食べることしかおもいつかないもんで・・・
でも、水族館にも久しぶりに行きたくなりました。
葛西はよかったですね、私も大好きです。
池袋のサンシャインは、今も開業しているんでしたっけ?
投稿: エム | 2008年8月25日 (月) 10時48分
貴重なコメントを有難うございました。 この後、東京都内の葛西臨海水族園でも見かけました。確か金目鯛と一緒でしたが、自然界では金目鯛のほうが深いところに棲んでいるのでしょう。底魚は上から餌が落ちてくるのを待っているのでしょうか、どちらも口が上を向いています。下あごの突起は何かわかりません。
調理についての的確なご意見で、プロの料理人の方でしょうか。お呼びの仕方がわかりませんが、お名前を付けて頂けますとありがたく思います。もちろん仮名、ニックネームでも構いません。
投稿: 帆走子 | 2008年8月25日 (月) 09時55分
マトウダイ、刺身にすると食感良いです。
淡白なので、薄造りで紅葉おろしが良いですね。
焼きにするなら、塩ではなく西京焼きみたいに味を入れないと淡白すぎます。
フレンチのようなバターとクリームの効いたソースなら良いかもしれません。
それなりのお値段ですが、食べ方を選ぶ魚ですね。
投稿: | 2008年8月24日 (日) 23時20分